Blue10のブログ

歯医者の豆知識を紹介します。

歯科で虐待を発見することがある?

最近テレビで毎日のように乳幼児の虐待につい放送されているのを見ます。3児の父親としては本当に信じられないことだと思います。
その虐待を歯医者が発見することがあるということで、年に何回か虐待(ネグレクト)についての研修を受けます。特に学校歯科医は研修を受ける義務があります。虐待とは暴力をふるったり、食事を与えないということだけでなく適切な医療を受けさせないということも含まれます。
一見しっかりしていそうな親でも子どもの口の中を見るとボロボロのひどい状態になっていて家の中では育児放棄してしまっていることがあります。そのような場合歯医者以外が気づいて発見するのは難しと思います。行政でも歯科医師会でも虐待を疑ったときの連絡システムができていて通報すると調査が入るようになっています。
ただ実際はむし歯がたくさんある子どもが来てもすぐに通報することはありません。むし歯の他に子どもの様子が明らかにおかしかったり、体中にアザができていたりということを確認できれば通報を考えますが、歯科で服を脱がせたりすることはできないので実際には難しいです。
何より親は子供に治療を受けさせるために診療所に連れてきている時点で虐待の可能性は低いと考えられるのです。ただ子どもの口の中に関心がなかっただけということが多いです。それはそれで問題があるのでしっかり親にも指導をすることが結構あります。
近隣の歯科医院の先生と話をしても診療所から虐待の報告は1件もありませんでした。さらにいうと周辺地域の行政機関からの報告でも1.6歳、3歳児検診のときの虐待を疑うケースは1件のみでそれも親の知識、関心の不足によるものであったという調査結果でした。
お気づきの人も居ると思いますが診療所に受診する、検診にちゃんと行く、幼稚園に通わせている、学校に毎日行っているという子どもは虐待を受けている可能性は低いのです。また怪しい場合でも歯医者が見る前に把握されており学校や幼稚園の先生が注意深く見ていることがほとんどです。問題なのはどこにも連れ出されない子どもなのです。そのような家庭には行政から自宅への訪問が強化されています。
ただいつ虐待を受けている子どもが受診するかわからないので研修を積み見逃さないようにしなければならないと思っています。

歯科医師になってから虐待で通報したことはありませんが、いじめで1件通報した経験があります。唇を切ったと母親同伴で受診したのですがどうも様子がおかしいのでほかの部分もチェックしました。すると耳の穴が切れていました、また髪の分け目に出来たばかりの傷とかさぶたが見えました。母親に事情を説明し体を見せてもらうとあちこちにアザができていました。時間差がはっきりわかるアザだったので継続して殴られていることが明らかでした。耳の穴は鉛筆を差し込まれたそうです。唇の傷は大したことがなかったのですが、いじめについては命に関わることだと判断して当時の上司と相談して然るべき機関に通報しました。大人しい子で学校にも親にも相談できなかったそうです。