Blue10のブログ

歯医者の豆知識を紹介します。

おやつを減らせばむし歯は防げるのか?

「むし歯になるからおやつをやめなさい」という言葉を聞いたり、実際に言ったことがある人もいるのではないでしょうか。多くの人が知っているようにむし歯の原因菌であるミュータンスは砂糖をエネルギーとして使うと同時に酸を作り出します。この酸によって歯が溶かされるとむし歯になります。つまり酸の原料となる砂糖の摂取を減らせばむし歯の予防になるということです、というのが今までの常識だったのですが実はそうではないということがわかってきたそうです。
砂糖の摂取量が年間15kgを超えると摂取量を減らしてもむし歯のリスクを下げることはできないそうです。つまり砂糖の年間摂取量を15kg以下にしないといけないということだそうです。しかし戦後日本は裕福になり砂糖の摂取量がぐんぐん増え、現在は年間摂取量が25kgを超えています。10kg以上摂取量を減らすというのはかなりの制限が必要となりあまり現実的な予防法ではありません。
むし歯のリスクが変わらないのであればいくら食べてもいいのかというとそういうわけではありません。肥満、生活習慣病などのリスクを考えると砂糖の多すぎる摂取は控えるべきです。

しかしスポーツドリンクなどの砂糖の入った飲み物をたくさん飲んだことによるむし歯が問題になっていることは間違いありません。ただこれはむし歯の原因菌が砂糖を代謝して酸を作り出したためにできたものではなく、飲み物自体のpHが低く歯を溶かしてしまったものであるといわれています。むし歯というよりも外部から取り込んだ酸により歯がとかされる酸蝕症と言われるものの部類に入るようです。

この内容は一般の方にはもちろんですが歯科医師にとってもかなりショッキングなものでした。さらにショッキングな内容も聞くことができましたので次回の記事で書いてみたいと思います。

歯医者は儲かるのか?

歯医者の治療費のことを書いた記事で少し触れたのですが、歯医者は儲かるのかというのが気になる人もいると思います。答えは歯医者によりけりということになります・・・。儲かっている歯科医院もあれば経営の厳しい歯科医院もあります。
ここでは平均的な歯科医院のことを書きます。
歯科医院の毎月の収入の中央値は300万円だそうです。ものすごく儲かっている歯科医院があるため平均値となるともう少し引き上げられてしまいます。中央値とは一番多いところの数値です。
この300万円がそのまま給料になるのではなく、ここから家賃、人件費、技工代、材料代、光熱費、機材のリース代、修繕や機材入れ替えのための積立などの諸経費が引かれます。では残りはどのくらいになるのでしょうか。歯科医院の経営のスタイルなどがあるので少し幅がありますが40万円~60万円と言われています。もちろんボーナスはないので年収で500万円~700万円ぐらいが多いということになります。意外と少ないと感じる人が多いのではないでしょうか。たくさん稼いでいる歯科医院もありますが中央値でこの数字ということを忘れてはいけません。これよりも少ない歯科医院がたくさんあります。
また大学や病院に勤務している先生もたくさんいます。その中には無給で勉強している人や給料があってもバイトをしないと生活できない人もたくさんいます。
歯医者=お金持ちという時代ではないということを知っていただければ幸いです・・・。

どうしたら歯科医師になれるのか?

学校歯科医を担当している中学校の講話をしていると、どのようにすれば歯科医師になれますか?ということを生徒から聞かれることがあります。簡単に答えると高校までは普通の勉強を頑張って歯科大学や大学の歯学部に入って6年間勉強して国家試験に合格すれば歯科医師になれます。
まず最初の難関は歯科大学・歯学部に入ることです。偏差値をみると私立大学では50前後とそこまで高くありません。ただその偏差値はあまりあてにしないほうがいいと思います。入試の倍率は大学にも寄りますが10倍近くあるということも珍しくありません。10人受けて1人しか合格しないということです。
なんとか大学に入っても6年間厳しい勉強を乗り越えなくてはなりません。また歯医者は職人的な要素もあるので削ったり、作ったりする技術面でも多くを学ばなくてはなりません。現在は4年生から5年生になるときに知識、技術、人間性を問われる試験がありこれに合格しないと病院実習に入ることができません。各学校とも国家試験の合格率を上げるために合格しそうもない学生を留年させるようになっています。そのためこの試験だけでなく進級自体が厳しくなっています。そして病院実習を終えて大学の卒業試験に合格すると国家試験の受験資格を得ることができます。卒業試験も厳しいもので簡単に受かるものではなくなっています。以前は9割以上あった合格率も現在は7割を下回るようになっています。2000人受けると600人は不合格なる厳し試験です。この不合格になった人たちは1年間国家試験のための勉強をするのですが合格する人は3割いるかどうかといのが現状です。6年間歯科の勉強しかしていないのでほかの職業に就くのは難しく浪人生活が長くなってしまいます。このように歯科医師になるためには以前よりも厳しくなっていることは間違いありません。
歯科医師になろうとしている本人も大変ですがそこに通わせる保護者も大変です。少し下がってはいるようですが学費が6年間で私立は3000万円前後かかります。国立では500万円程度となっています。学費の他に歯科は機材などが多く教材の購入費用が医科に比べてもとにかく高いです。さらに一人暮らしでもしようものなら毎月その生活費がかかります。
大学のカリキュラムが厳しくなっておりバイトで生活費を稼ぐのは大変だと思います。そのせいで留年でもしてしまったら逆に高くついてしまします。
それだけ大変な思いをして将来稼げるかというと、そんなに裕福な生活はできるような職業ではなくなっています。お金を稼げそうだからという理由で選ぶのは絶対にやめたほうがいいです。

歯科の治療費はなぜ高いのか?

いろいろなお医者さんにかかっていると歯医者の治療費は他に比べて高いと感じる人がいると思います。そのため歯医者はお金持ちだと巷で言われることが多いです。
実際に歯科治療でかかる費用はほかのお医者さんに比べて高いと思います。お医者さんでは診査・診断をした後に薬を出して終わりということが珍しくありません。歯科では基本的に診査・診断をした後に何かしらの処置をするので処置の費用がかかります。また銀歯や入れ歯などを作るとその費用がかかります。これが金額がかかる一番の原因だと思います。型取りをしたものを技工所に送って作製してもらうのですがその費用と材料代がかなり高いです。入れ歯、銀歯を入れるときに得られる収入は技工代、材料代でほぼなくなってしまします。作り方によっては赤字になってしまうこともあります。習得した技術と知識を用いて作った入れ歯を入れて赤字になるときは、正直がっくりしてしまいますが、患者さんのためだと思い頑張ります。
歯科ではこのような技工代、材料代の他に人件費、光熱費、機材などの設備費用がお医者さんに比べて多くかかると言われています。そのためものすごく儲かっている歯医者というのはそれほど多くありません。
歯科治療は基本的に処置をするので一日に診ることのできる患者さんの数が決まっています。そのためそんなにたくさん稼ぐことはできないのです。実際に日本の医療費の内訳をみると歯科に使われている医療費は全体の2.5%程度となっています。歯医者が多いと言われていますがこの2.5%の費用を各診療所で分け合っていると思うと結構厳しいというのがなんとなく想像つくのではないでしょうか。

高血圧と歯科治療にはどのような関係がああるか?

超高齢社会となった今基礎疾患を抱える人がとても多くなっています。中でも高血圧で薬を飲んでいる人はとても多いです。実はこの高血圧と歯科には関係があるのです。想像しやすいのは外科処置をしたときの出血です。高血圧という病気は血管の内圧が高まるので外科処置をしたときの出血が多くなり止血が困難になるこことがあります。また、もともと高い血圧が歯科医院という緊張する空間で、外科処置という緊張する処置をするとさらに高まることがあります。あまりに高くなると命に関わる重篤な症状がでることもあるのでその日の様子で処置を中止することもあります。
ここまではなんとなく想像できたと思いますが実は他にも関係があります。それは血圧を下げる薬を飲むことにより歯茎が盛り上がることがあります。歯科的には薬剤性歯肉肥厚といいます。炎症を起こしているわけではないのですが歯と歯の間の歯茎がもりもりと盛り上がります。ひどくなると歯を埋め尽くすような盛り上がり方をします。汚れによる腫れではないのでいくらクリーニングをしても治りません。
軽度なら様子をみることが多いですがひどい場合はお医者さんに相談して薬を別のものに変えてもらいます。すると1~2週間で嘘のようにすっきりと歯茎の盛り上がりはなくなります。
炎症ではないので痛みも出血もないので気づかなかったり、気づいていてもそのままにしている人がほとんどですが、盛り上がった歯茎のせいで磨きにくくなったり、盛り上がた歯茎を咬んでしまうこともあります。かかりつけ歯科医院で定期的にチェックしてもらい必要であれば薬の変更を検討してもらうのがいと思います。
実はこの副作用は血圧の薬に出やすいものであり、他にも同じ副作用を持つものがあります。薬を飲んでいて歯茎が盛り上がってくるようなことがあれば歯科医院で相談してみてください。

歯石にはタイプがある?

歯石というと歯茎に悪さをするものだということはわかると思います。ただその歯石には大きく分けて2つのタイプがあることを知らない人が多いのではないでしょうか。
一つは下の前歯の裏を中心に付く歯石で歯茎の上や歯と歯の間を埋めるように付くクリーム色のものです。このタイプの歯石は見た目が良くないのですが歯茎に悪さをしにくいものです。歯石というのは細菌が石灰化したものでそれ自体が悪さをするものではありません。その表面がザラザラしており細菌の住処になるということに問題があります。歯茎の上に乗っていたり歯と歯の間にある歯石はかなり大きくならなければ歯茎に悪さはほとんどしません。またついたとしてもこのタイプの歯石は目で見えるところにあるし比較的柔らかいので除去しやすいです。
もうひとつのタイプは歯周ポケットの中に付く歯石です。これは口を開けて鏡で見ても確認することはできません。症状もないので放置しやすいのですがポケットの中で最近の住処となるこの歯石は歯周病が進む原因となります。また色が黒く硬いこの歯石はポケットの深いところにあり見えないので除去が難しく時間もかかります。

2つの歯石の違いはまずそのできかたです。歯肉の上にできる歯石は唾液の成分が由来となり作られるので唾液の出口がある下の前歯の裏や上奥歯の頬側に付きやすいです。
歯周ポケットの中にできる歯石はポケットの中に出てくる血漿由来の成文が多く含まれます。赤血球が含まれるため黒くなります。唾液とは関係ないので上下前奥関係なく全体的に付きます。

前述したように歯周病を予防するにはポケットの中の硬くて黒い歯石を除去することが大切です。歯石を除去して最近の住処をなくすこと、また歯周病の原因となる菌は空気のあるところでは活動できないため洗って空気が入るだけでも効果があります。最終的にはポケットが浅くなり自分で掃除ができる環境にすることが目標になります。

歯石は付くのを完全に防ぐことはできないので定期的にかかりつけの歯科医院で除去してもらうことが必要です。

がんの治療は口腔内にどのような影響があるのか?

現在がんの治療で抗がん剤を使用している人が多くいますが、薬が良くなっていてその多くが通院で行われています。ただ副作用がなくなったわけではないので倦怠感や脱毛などの症状はほとんどの人に出るといっていいと思います。歯科の領域では口内炎が多発するということがあります。また気持ち悪くて歯磨きができず口の中の環境が悪くなってしまう人もいます。
口の中に出る症状を少しでも減らすためにはとにかく口の中をきれいにしておくことです。口の中をきれいにしておくと抗がん剤使用による口内炎を軽減できるということがわかっています。抗がん剤を使用することになった人には始める前と使用後体調が少し良くなったら受診して口腔内のクリーニングをすることを勧めています。もちろん虫歯など治療が必要なところがあれば治療をしてから抗がん剤を始めるのが良いです。
がんは命に関わる病気なので、そんなときに歯医者になんか行ってられないと思うかもしれませんが口内炎が痛くて食事ができないと弱った体の回復が遅くなってしまう可能性があります。しっかり食べて体力をつけるということが治療の助けになると思っているので動けるときに受診してもらうように説明しています。

抗がん剤とは違いますが頭頸部にできたがんに放射線治療をすることになった人は口の中は要注意です。放射線が唾液腺に当たると唾液の分泌量が一気に減少します。すると今まで虫歯がない人でも急にたくさんの虫歯ができることがあります。もちろん歯周病も進行しやすくなります。唾液はどのようなはたらきをしているのか?の記事でも書きましたが唾液の大切さを思い知らされます。